「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2012年07月05日

10分でわかる「平家物語」巻七「維盛都落」(平維盛と妻の別れ)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


「日ごろ申ししやうに、われは一門に具して西国の方へ落ち行くなり。いづくまでも具し奉るべけれども、道にも敵待つなれば、心やすう通らん事もありがたし。たとひわれ討たれたりと聞き給ふとも、様なンどかへ給ふ事はゆめゆめあるべからず。その故は、いかならん人にも見えて、身をも助け、幼きものどもをもはぐくみ給ふべし。情をかくる人もなどかなかるべき」と、やうやうになぐさめ給へども、北の方とかうの返事もし給はず、ひきかづきてぞふし給ふ。



すでにうッたたんとし給へば、袖にすがッて、「都には父もなし、母もなし。捨てられ参らせて後、又誰にかは見ゆべきに、いかならん人にも見えよなど承はるこそ恨めしけれ。前世の契りありければ、人こそ憐み給ふとも、又人ごとにしもや情をかくべき。いづくまでもともなひ奉り、同じ野原の露ともきえ、一つ底のみくづともならんとこそ契りしに、さればさ夜の寝覚のむつごとは、皆いつはりになりにけり。せめては身ひとつならばいかがせん、すてられ奉る身のうさを思ひ知ッてもとどまりなん、幼き者どもをば、誰にみゆづり、いかにせよとかおぼしめす。恨めしうもとどめ給ふ物かな」と、且つうはうらみ、且つうはしたひ給へば、三位中将のたまひけるは、「誠に人は十三、われは十五より見そめ奉り、火のなか水の底へもともにいり、ともにしづみ、限りある別れ路までも、おくれ先だたじとこそ申ししかども、かく心うきあり様にていくさの陣へおもむけば、具足し奉り、ゆくゑもしらぬ旅の空にてうき目を見せ奉らんもうたてかるべし。其上今度は用意も候はず。いづくの浦にも心やすう落ちついたらば、それよりしてこそ迎へに人をも奉らめ」とて、思ひきッてぞたたれける。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


「日ごろ申したように、私は一門とともに西国の方へ落ちのびていくのだ。どこまでもあなたをお連れもうしあげたいが、道中にも敵が待つようなので、安全に通っていくことは難しい。たとえ私が討たれたと聞きなさるとしても、出家しなさることは決してあってはならない。その理由は、(あなたは)どのような人とも結婚して、身を養ってもらい、幼い子供を育てなさるべきだからだ。あなたに愛情を持つ人もどうしていないだろうか、いやいるだろう。」とあれこれ慰めなさったが、奥方はあれこれお返事しなさることもなく、衣をかぶって泣き伏しなさった。


維盛がもう出発しようとしなさるので、妻は袖にすがりついて、「都には父も母もいない。あなたに捨てられ申し上げた後は、誰とも結婚しようと思っていないのに、誰とでも結婚しろなどと承るのは恨めしいことです。前世からの宿縁があるので、あなたが私を愛しなさったからといって、また別の人が私に愛情をかけるでしょうか、いやそんなことはありません。どこまででもお連れ申しあげて、二人は同じ野原の露と消え、同じ海底のみくずともなろうと誓ったのに、これでは夜の寝覚めのむつごとは皆うそになってしまった。せめて我が身ひとつであるならどうしようもありません。あなたに捨てられ申しあげる我が身のつらさを知りながら都にとどまりましょう。幼い子たちを、誰に世話してもらい、どのようにしようとお思いになるのですか? 恨めしくも都にとどめなさることですね。」と、一方で恨み、一方で慕われるので、維盛中将のおっしゃったことには「まことにあなたは13歳、私は15歳のときからあなたを見初め申し上げて、火の中や水の底にも共に入って、共に沈んで、限りのある命の死別の時も、先立たれてたり先立ったりするまいと申し上げたが、このように情けない状態で戦いの陣におもむくこととなったので、あなたをお連れ申し上げて、行方も知れない旅路でつらい目に合わせ申し上げるのも心苦しい。その上、今回はこれといった準備もしておりません。どこかの浦にでも安全に落ち着いたなら、そこから迎えに人をさしあげよう。」と思い切っておたちになった。




posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする