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2012年07月26日

10分でわかる「平家物語」巻七「一門都落」その2(平重盛に仕えた平貞能の、主人に寄せる深い想い)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


京中にのこりとどまる平家の余党をうたんとて、貞能が帰り入るよし聞えしかば、池大納言「頼盛が上でぞあるらん」とて、大きに恐れ騒がれけり。


貞能は西八条の焼け跡に大幕ひかせ、一夜宿したりけれども、帰り入り給ふ平家の君達一所もおはせねば、さすが心ぼそうや思ひけん、源氏の馬のひづめにかけじとて、小松殿の御墓ほらせ、御骨にむかひ奉ッて泣く泣く申しけるは、


「あなあさまし、御一門を御覧候へ。「生あるものは必ず滅す。楽しみ尽きて悲しみ来たる」といにしへより書きおきたる事にて候へども、まのあたりかかる憂き事候はず。君はかやうの事をまづさとらせ給ひて、兼ねて仏神三宝に御祈誓あて、御世を早うさせましましけるにこそ。ありがたうこそおぼえ候へ。其時貞能も最後の御供仕るべう候ひけるものを、かひなき命をいきて、今はかかるうき目にあひ候ふ。死期の時は必ず一仏土へむかへさせ給へ」と、


泣く泣く、遥かにかき口説き、骨をば高野へ送り、あたりの土をば賀茂川にながさせ、世の有様たのもしからずや思ひけん、主とうしろあはせに東国へこそおちゆきけれ。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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〈現代語訳〉


都中に残りとどまっている平家の残党を討とうとして、貞能(さだよし)が都に入ったとの旨うわさになったので、池の大納言は「私、頼盛のことであるだろう」と大いに恐れて騒がれた。貞能は西八条(にしはちじょう)邸の焼け跡に大幕を引かせて、一夜の宿をとったが、都に帰り入りなさる平家の公達はお一人もいらっしゃらないので、そうはいってもやはり心細く思ったのか、源氏の馬のひづめにかけさせまいと、小松殿平重盛の墓を掘らせて、遺骨に向かい申し上げて泣く泣く申したことには、


「ああ、あきれることだよ、重盛様、平家一門を御覧下さい。『生きているものは必ず滅びる、楽しみは尽きて悲しみがくる』と、昔から書き残されていることでございますが、目の当たりにしてこれほどつらい事はございません。あなたはこのような事をまずお悟りになって、以前から神仏、特に仏教への誓いがあって、人生を早くに終えなさったのであろう。滅多になく素晴らしいことと思います。あなたの臨終の時に、私貞能も最後のお供に仕えするべきでございましたのに、無駄な命を生きて、今はこのような、つらい目にあっております。私が死んだ時は必ず、極楽浄土へお迎えください。」と、


泣きながら、はるかあの世へと訴えて、重盛の遺骨を高野山へ送り、周囲の土を賀茂川へと流させて、この世の有様を頼りなく思ったのだろうか、宗盛ら平家の主流の一行とは反対に、東国へ落ちのびていった。


posted by manabiyah at 00:00| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする