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2013年12月14日

10分でわかる「平家物語」巻十一「遠矢」(阿波民部の裏切りにより、源平の決戦が終結にむかう)



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又源氏のかたよりいるかといふ魚一二千はうで、平家の方へむかひける。大臣殿これを御らんじて、小博士晴信をめして、「いるかはつねにおほけれども、いまだかやうの事なし。いかがあるべきとかんがへ申せ」と仰られければ、「このいるか、はみかへり候はば、源氏ほろび候ふべし。はうでとほり候はば、みかたの御いくさあやふう候ふ」と申しもはてねば、平家の舟のしたをすぐにはうで通りけり。「世の中はいまはかう」とぞ申したる。


阿波民部重能は、この三が年があひだ、平家によくよく忠をつくし、度々の合戦に命を惜しまずふせぎたたかひけるが、子息田内左衛門を生捕りにせられて、いかにもかなはじとや思ひけん、たちまちに心がはりして、源氏に同心してんげり。平家の方にははかりことに、よき人をば兵船に乗せ、雑人どもをば唐船に乗せて、源氏心にくさに唐船を攻めば、なかにとりこめてうたんと支度せられたりけれども、阿波民部が返忠の上は、唐船には目もかけず、大将軍のやつしのり給へる兵船をぞ攻めたりける。新中納言「やすからぬ。重能めをきッて捨つべかりつる物を」と、千たび後悔せられけれどもかなはず。さる程に、四国・鎮西のつは物共、みな平家をそむいて源氏につく。いままでしたがひついたりし物共も、君にむかッて弓をひき、主に対して太刀をぬく。かの岸につかんとすれば、浪たかくしてかなひがたし。このみぎはによらんとすれば、敵矢さきをそろへて待ちかけたり。源平の国あらそひ、けふをかぎりとぞ見えたりける。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


また源氏側の方角から「いるか」という魚が、一二千びき、口を開け閉め平家の方にむかっていった。平宗盛殿はこれをご覧になって、小博士である晴信を呼びなさって、「いるかはいつも群れて多くいるものだが、どういうことか占い申し上げよ。」とおっしゃられたので、「このいるかが、口を開けしめしながら、もと来た方向にもどりますなら、源氏が滅ぶでしょう。口を出してそのまま通りますなら、平家側の軍が危険です。」と(晴信が)申し上げ終わらないうちに、いるかは平家の舟のしたを泳いで通っていった。「平家の世は、もはやこれまでです。」と申した。


阿波民部重能は、この三年間、平家に大変に忠義をつくして、度重なる戦いでも命を惜しまずに戦ったのだが、子どもである田内左衛門を生捕りにされて、「どうにもかなうまい」と思ったのだろうか、すぐに心変わりして、源氏と心を同じくしてしまった。平家の側では作戦として、高貴な人を、兵たちが乗る舟に乗せて、身分の低い武士たちを、あえて中国風の唐舟に乗せて、源氏がそちらに引きつけられて唐船を攻撃したなら、中に取り囲んで討とうと用意をしなさっていたのだが、阿波民部の裏切りによって、(源氏方は)おとりの唐船には目もくれないで、大将軍がみすぼらしい姿に変装して乗りなさっていた兵船を攻めた。平知盛は言った。「しゃくにさわることだ。しげよしを切って捨てるべきであったのに。」と、繰り返し言って後悔しなさったがもうどうしようもない。そのうちに、四国や九州の武士達はみな、平家を裏切って源氏側についた。今まで従っていたものたちも、帝に対して弓を引き、主君に対して刀をぬいた。あちらの岸につこうとすると、波が高くて難しい。こちらの水際に船を寄せようとすれば、敵が矢を並べて待ちかまえていた。源平、天下分け目の決戦も、今日が最後だと見えた。

posted by manabiyah at 08:56| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする