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2013年12月20日

10分でわかる「平家物語」巻十一「先帝身投」(二位の尼は幼帝安徳天皇を抱いて舟の端へと歩み出る)



↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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源氏のつは物共、すでに平家の舟にのりうつりければ、水手梶取ども、射殺され、きり殺されて、舟をなほすに及ばず、舟ぞこにたはれふしにけり。新中納言知盛卿小舟に乗ッて御所の御舟に参り、「世のなかは、今はかうと見えて候ふ。見ぐるしからん物ども、みな海へ入れさせ給へ」とて、艫舳に走りまはり、掃いたり、のごうたり、塵拾ひ、手づから掃除せられけり。女房達「中納言殿、いくさはいかにやいかに」と口々にとひ給へば、「めづらしきあづま男をこそ御らんぜられ候はんずらめ」とて、からからと笑ひ給へば、「なんでうのただいまのたはぶれぞや」とて、声々にをめきさけび給ひけり。


二位殿はこの有様を御らんじて、日ごろ思し召しまうけたる事なれば、にぶ色のふたつ衣うちかづき、練袴のそばたかくはさみ、神璽をわきにはさみ、宝剣を腰にさし、主上をいだき奉ッて、「わが身は女なりとも、かたきの手にはかかるまじ。君の御ともに参るなり。御心ざし思ひ参らせ給はん人々は、いそぎつづき給へ」とて、ふなばたへ歩みいでられけり。主上ことしは八歳にならせ給へども、御年の程よりはるかにねびさせ給ひて、御かたちうつくしく、あたりもてりかかやくばかりなり。御ぐし黒うゆらゆらとして、御せなかすぎさせ給へり。

平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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【アイテム紹介】吉川英治「新・平家物語」を映像化。かつてのNHK大河ドラマの名作「新・平家物語」の総集編です。二位の尼は「小さくうつくしき御手を合わせる幼帝」をいざない入水へと向かいます。憔悴しきった中でも凛とした二位の尼を演じるのは中村玉緒。落日の壇の浦の映像が印象的です。是非、観てください。

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〈現代語訳〉


源氏の武士たちは、すでに平家の舟に乗り移ってきたので、水夫や舵取りたちも射殺されたり、斬り殺されたりして、舟の進路をもどすことができぬまま、みな船底に倒れて臥してしまった。新中納言平知盛は小舟に乗って、安徳天皇のいる御所の舟に参って、「平家の世の中は、もはやこれまでと見えます。見苦しいようなものは、みな海の中へ入れなさってください。」といって、舟の「とも」から、「へさき」まで走り回って、はいたり、ぬぐったりして、塵を拾って、自ら掃除をされた。女房たちが「知盛殿、戦いはどうなったのですか」と口々に問いなさるので、「珍しい東国の男たちをご覧になることになるでしょう。」といって、からからと笑いなさったので、(女房達は)「なんとも、ひどい、ただ今のご冗談は。」といって声々にわめき叫びなさった。


二位殿はこの様子をご覧になって、日ごろから心の準備をしなさっていた事であるので、濃いねずみ色の二枚の衣を頭にかぶり、はかまのすそをたくし上げて、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)をわきにはさみ、草薙の剣を腰にさして、安徳天皇をお抱き申しあげて「私自身は女であっても、敵の手にかかるつもりはない。帝のおともに参るのだ。帝に志を思い申し上げなさるような人々は、いそいで私に続きなされ。」といって、舟の端の方へ歩み出なさった。帝は今年は8歳におなりになったが、年齢のわりには、はるかに成長なさっていて、お姿もかわいらしく、周囲も照り輝くほどであった。髪も黒くゆらゆらとして、背中を越えるくらいの長さにのびなさっていた。


posted by manabiyah at 08:31| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする