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2014年02月14日

10分でわかる「平家物語」巻十一「腰越その2」(義経の悲痛な想いを訴える腰越状の前半部分)



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まッたく不忠なきよし、たびたび起請文をもッて申されけれども、景時が讒言によッて、鎌倉殿用ひ給はねば、判官泣く泣く一通の状をかいて、広元のもとへつかはす。


「源義経恐ながら申し上げ候意趣者、御代官の其一つに撰ばれ、勅宣の御使として、朝敵をかたむけ、会稽の恥辱をすすぐ。勲賞おこなはるべき処に、思の外に虎口の讒言によッて莫大の勲功を黙せらる。義経をかしなうして咎をかうむる。功あつて誤なしといへども、御勘気を蒙るあひだ、むなしく紅涙にしづむ。讒者の実否をただされず、鎌倉中へ入られざる間、素意をのぶるにあたはず、いたづらに数日ををくる。此時にあたッて、ながく恩顔を拝し奉らず。骨肉同胞の義すでに絶え、宿運きはめてむなしきににたる歟。将又先世の業因の感ずる歟。悲しき哉、此条、故亡父尊霊再誕し給はずは、誰の人か愚意の悲歎を申しひらかん、いづれの人か哀憐をたれられんや。


事あたらしき申状、述懐に似たりといへども、義経身体髪膚を父母にうけて、いくばくの時節をへず故頭殿御他界の間、みなし子となり、母の懐のうちにいだかれて、大和国宇多郡におもむきしよりこのかた、いまだ一日片時安堵の思ひに住せず。甲斐なき命は存すといへども、京都の経廻難治の間、身を在々所々にかくし、辺土遠国をすみかとして、土民百姓等に服仕せらる。」


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」

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【アイテム紹介】「平家物語」以前の物語が描かれているのが「保元物語」「平治物語」。「平家物語」に比べて出版されている本の種類も少ないのですが、この小学館の「日本古典文学全集」のシリーズは「原文・現代語訳・注」が段組みになっていて非常に便利です。平将門の乱を描いた「将門記」や、前九年の役を描いた「陸奥話記」も収録されています。

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新編日本古典文学全集 41



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〈現代語訳〉


義経はまったく不忠の心がないことを、たびたび起請文を書いて申し上げたが、梶原景時の讒言によって、頼朝は受け入れないので、義経は泣く泣く一通の書状を書いて、大江広元のもとに送った。


「私源義経が恐れながら申し上げます内容は以下です。私義経は鎌倉の代官の一人として選ばれて、朝廷の命をうけた使者として、朝敵をほろぼして、積年の恨みを果たした。論功行賞が行われるべきところなのに、予想外のひどい讒言によって、莫大であるはずの恩賞を黙殺された。私義経は罪を犯すこともなく、咎をこうむっている。功績こそあるが、過ちはないのに、お怒りをうけて、むなしく血の涙を流しております。讒言をした者のの真偽を問いただされることもなく。私の方は鎌倉の中へ入れてもらえないので、私の本心を述べることもできずに、無駄に数日を送っています。今この時にあたって、私は長く兄頼朝様のお顔を拝見していません。肉親である兄弟の縁はすでに切れて、前世からの運命も全くなくなってしまったのか。あるいはまた、これこそが前世からの業による因縁によるものか、悲しいことだよ。このことは、亡くなった父義朝の霊が生まれ変わって現れなさらないなら、誰が愚かなる私の悲嘆を申しひらくだろう。どの人が憐れみをたれていくれだろうか。いや誰もいない。


いまさらめいた申しあげようで、愚痴のようでありますが、私義経は、この身体を父母から授かって、いくらの時も時を経ないうちに、父源義朝が他界したために、みなしごとなって、母のふところの中に抱かれて、大和国宇多郡(やまとのくに・うだのこおり)へと赴いて以来今まで、いまだに一日も、片時も、安堵の想いに浸ったことはない。生き甲斐もない命はあるといっても、都を歩き回ることは難しかったので、我が身をあちこちの村里に隠しながら、辺境の地や遠い国を住処として、地方の農民たちに召し使われました。」


posted by manabiyah at 07:32| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする