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2014年02月21日

10分でわかる「平家物語」巻十一「腰越その3」(義経が頼朝に自らの切ない想いを訴える「腰越状」の後半部分)



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「しかれども高慶たちまちに純熟して、平家の一族追討のために上洛せしむる手あはせに、木曾義仲を誅戮の後、平氏をかたむけんがために、或時は峨々たる巌石に駿馬に鞭うッて、敵の為に命をほろぼさん事を顧みず、或時は漫々たる大海に風波の難をしのぎ、海底に沈まん事をいたまずして、かばねを鯨鯢の鰓にかく。しかのみならず、甲冑を枕とし弓箭を業とする本意、しかしながら亡魂のいきどほりをやすめたてまつり、年来の宿望をとげんと欲する外他事なし。あまッさへ義経五位尉に補任の条、当家の重職何事か是にしかん。


しかりといへども今愁ふかく歎き切なり。仏神の御たすけにあらずより外は、争か愁訴を達せん。これによッて諸神諸社の牛王宝印のうらをもッて、野心を挿まざるむね、日本国中の大小の神祇冥道を請じ驚かし奉ッて、数通の起請文を書き進ずといへども、猶以御宥免なし。我国は神国也。神は非礼を享け給ふべからず。憑むところ他にあらず。ひとへに貴殿広大の慈悲を仰ぐ。便宜をうかがひ高聞に達せしめ、秘計をめぐらし、あやまりなきよしを宥ぜられ、放免にあづからば、積善の余慶家門に及び、栄花をながく子孫につたへん。仍て年来の愁眉を開き、一期の安寧を得ん。書紙につくさず。併令省略候ひ畢んぬ。義経恐惶謹言。元暦二年六月五日源義経 進上因幡守殿へとぞ書かれたる。」

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「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


しかし幸運が訪れ、ある時、機は熟して、平家一族を討つために上京の命を受け、その手始めに、木曾義仲を討ち滅ぼした後に、平家を滅ぼさんがために、ある時は険しい岩山を、馬に鞭を打って駆け抜け、敵のために我が命を失うこともかえりみず、ある時は漫々と水をたたえた大海に波風の難をしのいで、海底に沈むことをも気にせず、自らのしかばねをくじらの餌にすることも厭わず戦った。それだけではなく、甲冑を枕として野宿し、弓矢を取り戦うことを生業としたその本心は、全て亡くなった父源義朝の魂の怒りを休めもうしあげて、長年の平家打倒の望みを果たそうと欲すること以外ほかのことはない。その上、私義経が五位尉(ごいのじょう)に任命されたことは、源氏にとっても重要な役職でこの上もないことだろう。


「そうだといっても、今、私の憂いは深く、嘆きは切実です。神や仏のお助けによらない限りは、どうしてこの嘆願を兄頼朝様の耳に入れることができようか。いやできない。だからこのように諸々の神仏の護符の紙の裏側に、私が野心などもっていないことを、日本中の、大小の神や、冥界の仏をお呼びし、真実に気づいて頂いくため、何枚かの起請文を献上したのですが、依然として、兄頼朝様からのお許しがない。わが日本国は神国である。神は礼に反する願いをお受けにならないはずだ。あてにするところは他には無い。ただひたすら大江広元様、あなたの広大な慈悲を仰ぎます。機会をうかがって兄頼朝様の耳に届くようにして、あれこれ手段を用いて、私に過ちがないとして許しをもらって、私義経が無罪放免となるなら、あなたの善行の報いは一族に渡って、繁栄を長く子孫に伝えるだろう。それによって私義経もまた長年の憂いを解いて、一生涯の安らぎを得られるでしょう。紙には書き尽くすことはできない。余計なことはすべて省略いたしました。私義経は恐れながら慎んでもうしあげます。元暦二年六月五日源義経 因幡守殿大江広元様へ献上」と書かれた。

posted by manabiyah at 12:23| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする