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2014年03月14日

10分でわかる「平家物語」巻十一「重衡被斬」(奈良に送られる平重衡が途中、北の方と対面をする)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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あはせの小袖に浄衣をいだされたりければ、三位中将これを着かへて、もと着給へる物どもをば、「形見に御覧ぜよ」とておかれけり。北の方「それもさる事にてさぶらへども、はかなき筆の跡こそながき世の形見にてさぶらへ」とて、御硯を出されたりければ、中将泣く泣く一首の歌をぞ書かれける。

 せきかねて泪のかかるからころも後のかたみにぬぎぞかへぬる

女房ききもあへず

 ぬぎかふるころももいまはなにかせんけふをかぎりの形見と思へば

「契あらば後世にては必ず生れあひ奉らん。一つ蓮にと祈り給へ。日もたけぬ。奈良へもとほう候ふ。武士のまつも心なし」とて、出で給へば、北方袖にすがッて「いかにやいかに、しばし」とてひきとどめ給ふに、中将「心のうちをばただおしはかり給ふべし。されどもつひに逃れはつべき身にもあらず。又来ん世にてこそ見奉らめ」とて出で給へども、まことに此世にてあひ見ん事は、これぞかぎりと思はれければ、今一度たちかへりたくおぼしけれども、心弱くてはかなはじと、思ひきッてぞいでられける。


北の方御簾のきは近く臥しまろび、をめき叫び給ふ御声の、門の外まではるかに聞えければ、駒をもさらにはやめ給はず。涙にくれてゆくさきも見えねば、中々なりける見参かなと、今はくやしうぞ思はれける。大納言佐殿やがてはしりついてもおはしぬべくはおぼしけれども、それもさすがなれば、ひきかづいてぞふし給ふ。


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〈現代語訳〉


大納言佐は重衡にあわせの小袖と白い狩衣を差し出したので、重衡はこれに着替えて、もともと着ていた衣を「形見として見なさってください」と置かれた。大納言佐は、「それもそうでございますが、ちょっとした筆跡こそ、この後の長き世の形見となりましょう。」といって硯を差し出しなさったので、重衡は泣く泣く一首の歌を書かれた。

せきとめかねて 涙がかかった 衣を 来世への 形見として脱ぎかえた


大納言佐は聞き終わらないうちに、

脱ぎかえた 衣も今となっては なんということもない 今日限りの 形見の品となると思うと


「因縁があるならば、来世で必ず同じところに生まれあい申し上げよう。ひとつの蓮にと祈りなされ。日も傾いた。奈良への道は遠くございます。武士達が待せてるのも分別がない。」と言って出ていきなさるので、大納言佐は重衡の袖にすがって「どうして、どうして、もうしばらく」といって引き止めなさると、重衡は言った。「私の心の中を推し量りください。どうしても最終的には生きのびることができる我が身ではありません。また来世でお会い申し上げましょう」といって出ていきなさるが、本当に、この世で互いに会うことは、これで最後になると思われるので、重衡は、もう一度大納言佐のもとに帰りたく思いなさるが、「意志が弱くあってはいけない」と思い切って出ていかれた。

大納言佐が御簾の際近くに倒れて臥して、わめき叫びなさる声が、門の外までも遠く聞こえたので、重衡は全く馬を急がせなさることができず、涙に曇って行き先も見えないので、「かえって心のこりとなってしまった対面であるよ」と今となっては悔しく思われた。大納言佐は、すぐに走って追いつきなさろうともお思いになったが、それもやはりすべきではないので、着物を被って臥しなさった。

posted by manabiyah at 13:13| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする