「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2014年05月24日

10分でわかる「平家物語」巻十二「泊瀬六代」(六代は都で母と再会を果たす)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


二条猪熊なる所に文覚房の宿所ありければ、それに入れ奉ッて、しばらくやすめ奉り、夜半ばかり大覚寺へぞおはしける。門をたたけども、人なければ音もせず。築地のくづれより若公のかひ給ひける白いゑのこのはしり出でて、尾をふッてむかひけるに、「母うへはいづくにましますぞ」と問はれけるこそせめての事なれ。斎藤六、築地をこえ、門をあけて入れ奉る。ちかう人の住みたる所とも見えず。「いかにもしてかひなき命をいかばやと思ひしも、恋しき人々を今一度見ばやと思ふためなり。こはされば何となり給ひけるぞや」とて、夜もすがら泣かなしみ給ふぞまことに理と覚えて哀れなる。


夜を待ちあかして近き里の者に尋ね給へば、「年のうちに大仏参りとこそうけ承り候ひしか。正月の程は長谷寺に御こもりと聞え候ひしが、其後は御宿所へ人のかよふとも見候はず」と申しければ、斎藤五いそぎ長谷へ参ッて尋ねあひ奉り、此由申しければ、母上・めのとの女房つやつやうつつともおぼえ給はず、「是はされば夢かや。夢か」とぞのたまひける。いそぎ大覚寺へ出させ給ひ、若公を御覧じてうれしさにも、ただ先立つものは涙なり。「早々出家し給へ」と仰られけれども、聖惜しみ奉ッて出家もせさせ奉らず。やがてむかへとッて高雄に置き奉り、北の方のかすかなる御有様をもとぶらひけるとこそ聞えし。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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【アイテム紹介】
この本の中で、石母田正氏は「『重盛-維盛-六代』の系統の物語が、平家物語の骨格の全体ではないが、少くともその重要の一部」であるとして、「平氏の運命の予言者としての重盛の言葉が、典型的に実現されてゆく過程として、平家の作者は六代にいたる重盛の子孫をとくに浮彫したのではないか」と指摘しています。岩波新書青版「平家物語」は平家物語成立の過程に対しての考察など、「平家物語」を読み解くためのエッセンスが凝縮された名著です。是非一読を。


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平家物語 (岩波新書)


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〈現代語訳〉


二条大路と猪熊大路の交叉する場所に文覚の宿所があったので、文覚はそこに六代を入れ申し上げて、しばらく休ませ申し上げてから、六代は夜中ごろに大覚寺にいらっしゃった。門をたたくが、人がいないので音もしない。土塀のくずれたところから六代が飼っていらっしゃった白い子犬が走り出てきて、尾をふって寄ってきたので、「母上はどこにおられるのだ」と問われたことは思いあまってのことだった。斎藤六が土塀を越えて、門を開けて六代を中に入れ申し上げた。最近まで人が住んでいたところは思われない。「どうにかして生き甲斐もないこの命を生きながらえたいと思ったのも、恋しい人々をもう一度見たいと思ったためである。これはいったいどうなりなさったのか。」と一晩中泣き悲しみなさったことは本当に道理だと思われて悲しい。


夜が明けるのを待って近い里の者にお尋ねになると、「年内は大仏に参るということをお聞き申し上げておりました。正月の頃には長谷寺におこもりになると聞いておりますが、それから後は、お宅に人が通う様子は見ておりません。」と申したので、斎藤五は急いで長谷寺へ参って母君を尋ねてお会い申し上げて、このことを申し上げたところ、母上も、めのとの女房も、まったく現実のこととは思いなさらなかった。「これはいったい夢か、夢であるのか」とおっしゃった。母上たちは、急いで大覚寺へとお出ましになって、若君とご対面になって、嬉しさにつけても、まず先に出て来るものは涙である。母は「はやく出家しなされ」とおっしゃられたが、文覚は惜しみ申し上げて出家させ申し上げない。そのまま迎えとって高尾に六代を置き申し上げて、母北の方のささやかな暮らしを訪れて世話したとということだった。


posted by manabiyah at 14:40| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする