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2014年06月20日

10分でわかる「平家物語」灌頂巻「大原御幸」(大原の寂光院を後白河法皇が訪れる)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


かかりし程に、文治二年の春の比、法皇、建礼門院大原の閑居の御住ひ、御覧ぜまほしうおぼしめされけれども、二月三月の程は風はげしく、余寒もいまだつきせず。峯の白雪消えやらで、谷のつららもうちとけず。春過ぎ夏きたッて北祭も過ぎしかば、法皇夜をこめて大原の奥へぞ御幸なる。しのびの御幸なりけれども、供奉の人々、徳大寺・花山院・土御門以下、公卿六人、殿上人八人、北面少々候ひけり。鞍馬どほりの御幸なれば、彼清原深養父が補陀落寺、小野の皇太后宮の旧跡を叡覧あッて、それより御輿にめされけり。


遠山にかかる白雲は、散りにし花のかたみなり。青葉に見ゆる梢には、春の名残ぞ惜しまるる。比は卯月廿日余の事なれば、夏草のしげみが末を分けいらせ給ふに、はじめたる御幸なれば、御覧じなれたるかたもなし。人跡たえたる程もおぼしめし知られて哀れなり。西の山のふもとに一宇の御堂あり。即寂光院是也。ふるう作りなせる前水、木立、よしあるさまの所なり。「甍やぶれては、霧不断の香をたき、枢おちては月常住の灯をかかぐ」とも、かやうの所をや申すべき。


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


こうしている間、文治二年の春の季節、後白河法皇は建礼門院の大原の静かなお住まいを、ご覧になりたいとお思いになったが、二月三月の頃は風も激しく、寒気も残って尽きていない。峰に積もった白雪は消え切っておらず、谷の氷も解けていない。春が過ぎて夏がやってきて北祭りも過ぎたので、法皇は未明のうちから大原の奥へとお出ましになる。おしのびのお出ましであったが、お供申し上げた人々は、徳大寺実定、藤原兼雅、源通親以下、公卿が六人と殿上人が八人、北面の武士が何名かお付き添い申し上げた。鞍馬街道沿いのお出ましであったので、あの清原深養父の建立した補陀落寺や、後冷泉天皇の皇太后の宮の旧跡をご覧になって、そこからは輿にお乗りになった。


遠くの山にかかっている白い雲は、散ってしまった桜の名残のようだ。青葉となった桜の梢に残った花から、春の名残が惜しまれる。時は四月の二十日過ぎの事であるので、夏草の茂みの葉の末を分け入りなさると、法皇にとっては初めての場所へのお出ましなので、見慣れていなさるところもない。人が入り込んだ形跡も全く無い様子が、思い知られてしみじみと心打たれなさる。大原の里の西の山のふもとに一つのお堂がある。まさしくこれが寂光院である。古めかしく作りなした池や植え込みは由緒ある様子のところである。屋根瓦が壊れて、霧が入ってきて不断の香を炊いたようで、雨戸が外れ、月の光が灯明をかかげたように入ってくる、というのはこのような場所のことを申すのだろうか。

posted by manabiyah at 09:01| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする