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2014年07月04日

10分でわかる「平家物語」灌頂巻「大原御幸」その3(後白河法皇は建礼門院徳子と対面を果たす)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


さてかたはらを御覧ずれば、御寝所とおぼしくて、竹の御さをに麻の御衣、紙の御衾などかけられたり。さしも本朝漢土のたへなるたぐひ数をつくして、綾羅錦繍の粧もさながら夢になりにけり。供奉の公卿殿上人もおのおの見参らせし事なれば、今のやうにおぼえて、皆袖をぞしぼられける。


さる程に、上の山より、こき墨染の衣着たる尼二人、岩のかけぢをつたひつつ、おりわづらひ給ひけり。法皇是を御覧じて、「あれは何ものぞ」と御尋ねあれば、老尼涙をおさへて申しけるは、「花がたみひぢにかけ、岩つつじとり具してもたせ給ひたるは、女院にてわたらせ給ひさぶらふなり。爪木に蕨折り具してさぶらふは、鳥飼の中納言伊実のむすめ、五条大納言邦綱卿の養子、先帝の御めのと、大納言佐」と申しもあへず泣きけり。法皇もよにあはれげにおぼしめして、御涙せきあへさせ給はず。


女院は、さこそ世を捨つる御身といひながら、いまかかる御有様を「見え参らせむずらんはづかしさよ。消えもうせばや」とおぼしめせどもかひぞなき。宵々ごとのあかの水、結ぶたもともしをるるに、暁おきの袖の上、山路の露もしげくして、しぼりやかねさせ給ひけん、山へも帰らせ給はず、御庵室へもいらせ給はず、御涙にむせばせ給ひ、あきれてたたせましましたる処に、内侍の尼参りつつ、花がたみをば給はりけり。

平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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〈現代語訳〉


そして法皇が傍らをご覧になると、寝室であると思われて、竹の衣紋掛けに、麻の衣、紙でできた夜具などがかけられていた。あれほど我が国や中国の立派な衣服を数そろえて、綾をなしたうすものや、刺繍をこらした錦を着飾ったことも全て夢となってしまった。おとも申し上げている公卿や殿上人たちも、それぞれが見申し上げていた女院の事なので、かつての栄華が、今のことのように思われて、皆涙を流して袖を絞りなさった。


そうしているうちに、上の方の山から、濃い墨染めの衣を着た尼が二人、岩のがけの道をつたいながら、難儀しながら下って来なさった。法皇はこれをご覧になって、「あれは何者であるか」とお尋ねになったので、老いた尼が涙をおさえながら申し上げたことには「花籠を肘にかけて、岩つづじを取りそえてお持ちになっているのは、女院でいらっしゃいます。薪に蕨を折りそえて持っておりますのは藤原伊実のむすめで、五条大納言邦綱の養子、安徳天皇の乳母であった大納言の佐です。」と申し上げきれずに泣いてしまった。法皇もまことに哀れにお思いになって、涙をとめることができずにいらっしゃる。


女院はそのように世を捨てなさった身であるといいながらも、今のこのような御様子を、法皇に見せ申し上げることの恥ずかしさよ。消え失せたい。」とお思いになったがどうしようもない。夜ごとに仏に供える閼伽棚の水を汲むたもとも水に濡れ、袖をしぼり切れないほどの、悲しみを感じなさったのであろうか、女院は山へも帰りなさらず、庵室にもお入りにならない。涙にむせびなさって、呆然とたたずんでいらっしゃるところに、阿波の内侍の老尼は女院のもとに参っていき、花籠を女院から頂いた。


posted by manabiyah at 13:27| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする