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2014年07月11日

10分でわかる「平家物語」灌頂巻「六道之沙汰」(天上界のような栄華と人間世界の苦を語る徳子)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
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繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


「我平相国のむすめとして天子の国母となりしかば、一天四海みなたなごころのままなり。拝礼の春の始より、色々の衣がへ、仏名の年のくれ、摂禄以下の大臣公卿にもてなされしありさま、六欲四禅の雲の上にて八万の諸天に囲繞せられさぶらふらむ様に、百官悉くあふがぬものやさぶらひし。清涼紫宸の床の上、玉の簾のうちにてもてなされ、春は南殿の桜に心をとめて日を暮し、九夏三伏のあつき日は、泉をむすびて心をなぐさめ、秋は雲の上の月をひとり見むことをゆるされず。玄冬素雪のさむき夜は、妻をかさねてあたたかにす。長生不老の術をねがひ、蓬莱不死の薬を尋ねても、只久しからん事をのみ思へり。あけてもくれても楽しみさかえし事、天上の果報も是には過ぎじとこそおぼえさぶらひしか。


それに寿永の秋のはじめ、木曾義仲とかやに恐れて、一門の人々住なれし都をば雲井のよそに顧て、ふる里を焼野の原とうちながめ、古は名をのみききし須磨より明石の浦づたひ、さすが哀れに覚えて、昼は漫々たる浪路をわけて袖をぬらし、夜は洲崎の千鳥と共に泣きあかし、浦々島々よしある所を見しかども、ふるさとの事は忘れず。かくて寄る方なかりしは、五衰必滅の悲しみとこそおぼえさぶらひしか。人間の事は愛別離苦、怨憎会苦、共に我身にしられてさぶらふ。四苦八苦一として残る所さぶらはず。」


平家物語連続講義のこれまでの内容を物語の展開順にまとめました。
「平家物語連続講義放送リスト」
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平家物語図典


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〈現代語訳〉


「私は平清盛のむすめとして、天皇の母となったので、この国全てがわが手の中のように思い通りになった。拝礼の儀式の行われる新年の始めから、季節ごとの衣更え、仏名会のある年の暮れまで、摂政関白以下の大臣や公卿などにもてなされた様子は、六欲天・四禅天など天界の雲の上で、八万もの神々に囲まれておりましたように、すべての官吏の中で、皆、私を仰ぎ見ないものはおりませんでした。清涼殿や紫宸殿の床の上の美しいすだれの中で大事にされて、春は南殿の桜に心をとめて一日を過ごし、真夏の暑い日は、泉の水を汲んで心をなごませ、秋は雲の上の月をひとりで見ることは許されなかった。冬の、雪が白く、寒い夜は、衣を重ねて着て暖かくして過ごした。長寿、不老のわざを願って、蓬莱産に不死の薬を探し求めてでも、ただこの命が長く続くことばかりを思っていた。明けても暮れても楽しんで、栄えた日々を送った事は、天上界での幸福もこれに勝らないだろうと思っておりました。」

「それが寿永の秋のはじめに、木曾義仲などという者に恐れをなして、わが平家一門の人々は、住み慣れた都を離れ、雲のむこうのように遠くに振り返って、かつての福原の都を焼け野原として眺めて、昔は名前だけを聞いていた須磨から明石の浦を伝ったことは、そうはいっても悲しく思われて、昼は水をたたえた波路を漕ぎ進んで涙で袖を濡らし、夜は浅瀬で鳴く千鳥とともに泣き明かして、海や島など由緒あるところは見たが、京の事は忘れなかった。このように頼りない状態は、五衰必滅の悲しみと思いました。人間界のことは愛別離苦、怨憎会苦とともに我が身をもって知っています。四苦八苦のうちひとつも残したところはありません。」

posted by manabiyah at 12:59| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする