「平家物語」各場面の原文朗読・現代語訳・解説の音声ファイルを公開しています。
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2014年08月03日

10分でわかる「平家物語」灌頂巻「女院死去」(女院徳子は改めて我が身を振り返り、歌を詠む)


↑「平家物語」原文の朗読・現代語訳・解説の音声ファイルです。
再生ボタンをクリックして聴くことができます。(各回10分程度)
右端のDLボタンからダウンロードしてiPodなどに入れて、
繰り返し聴くこともできます。(ページ下に全訳あり。)


さる程に寂光院の鐘の声、けふも暮れぬとうち知られ、夕陽西にかたぶけば、御名残をしうはおぼしけれども、御涙をおさへて還御ならせ給ひけり。女院は今更いにしへを思し召し出させ給ひて、忍びあへぬ御涙に、袖のしがらみせきあへさせ給はず。はるかに御覧じおくらせ給ひて、還御もやうやうのびさせ給ひければ、御本尊にむかひ奉り、「先帝聖霊、一門亡魂、成等正覚、頓証菩提」と泣く泣くいのらせ給ひけり。むかしは東にむかはせ給ひて、「伊勢大神宮、正八幡大菩薩、天子宝算、千秋万歳」と申させ給ひしに、今はひきかへて西にむかひ、手を合はせ、「過去聖霊、一仏浄土へ」といのらせ給ふこそ悲しけれ。御寝所の障子にかうぞ遊ばされける。


 このごろはいつならひてかわがこころ大みや人のこひしかるらん
 いにしへも夢になりにし事なれば柴のあみ戸もひさしからじな


御幸の御供に候はれける徳大寺左大臣実定公、御庵室の柱にかきつけられけるとかや。


 いにしへは月にたとへし君なれどそのひかりなき深山辺の里


こしかたゆくすゑの事ども思し召しつづけて、御涙にむせばせ給ふ折しも、山郭公音信ければ、女院、


 いざさらばなみだくらべんほととぎすわれもうき世にねをのみぞ鳴く


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〈現代語訳〉


そして寂光院に鳴る鐘の音で、今日も日が暮れたと知られ、夕陽が西に傾いたので、お名残惜しいと法皇はお思いになったが、涙をおさえながらお帰りになった。女院徳子はいま改めて昔のことを思い出しなさって、耐え切れない涙を、袖でせきとめることがおできにならない。法皇のお帰りを遠くに見送りなさって、お帰りの行列も次第に遠ざかっていきなさったので、ご本尊に向かい申し上げて、「安徳天皇の霊魂と 平家一門の亡き魂が 正しい悟りを得て すみやかに成仏するように」と、泣く泣く祈りなさった。昔は東にむきなさって「伊勢の大神宮・正八幡大菩薩様よ 天皇の寿命が千年も万年も続きますように」と申しあげなさっていたのに、今はうって変わって、西にむかって、合掌して、「亡くなった方々の霊をみな 極楽浄土へとお導きください」と祈りなさるのは悲しいことだ。寝室の障子にこのようにお書きになった。


「この頃は いつ習い覚えたのか 私の心は 宮中の人々を 恋しくなっていることよ」
「昔のことも 夢になってしまった 事であるから 柴のあみ戸の暮らしも 長くないだろうよ」


法皇のお出ましのおともにお仕え申し上げられた徳大寺の左大臣実定公が、庵室の柱に書き付けたとかいうことだ。
「昔は 月にたとえた あなたであるけれど 今はその光もない この深い山里では」


(女院徳子が)過去のこと、これからの事を思い続けられて、涙にむせびなさったちょうどその時、山ほととぎすが鳴いたので、女院はこのように詠んだ。
「さあそれならば 涙比べをしよう ほととぎすよ 私もつらいこの世で 声をあげて泣くばかりであるよ」

posted by manabiyah at 12:39| 平家物語過去分 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする